なぜ日本は400mリレーは強いのか? バトンともう一つの理由
リオデジャネイロオリンピック本大会・男子4×100mリレーの予選で、日本はアジア新記録を出し、予選2組をぶっちぎりの1着(総合で2位)で通過、そして、決勝で銀メダルを獲得した。
「なぜ日本は、単独の100m走では準決勝進出が限界なのに、4×100mリレーだとこんなにも強くなるのか?」と多くの人が思ったはずだ。
まずは「バトン受け渡し」
誰もが思いつくのは、リレーだと「バトンの受け渡し」というのがある点。
「いかにしてトップスピードを保ったまま、スムーズに、効果的に次の走者へバトンを受け渡すか?」
といったテクニカルな部分は、日本の最も得意とするところで、議論に議論を重ね、検証に検証を重ね、アップデートにアップデートを重ね、最高のノウハウを確立する。
オーバーハンドパスとアンダーハンドパス
現在、多くの強豪国が「オーバーハンドパス」を採用しているに対し、日本チームが採用しているバトンの受け渡しは、「アンダーハンドパス」と言われるもの。
オーバーハンドパスとアンダーハンドパスの違いは、前走者が次走者にバトンを渡す時、上から振りかぶるようにして渡す(オーバーハンドパス)か、下から突き上げるようにして渡す(アンダーハンドパス)かの違いのこと。
それぞれの長所・短所
一般に、オーバーハンドパスの長所(短所)がアンダーハンドパスの短所(長所)と言われている。
具体的には、オーバーハンドパスは、前走者と次走者の距離を保ちやすいので、衝突する心配がないことが挙げられる。
一方、アンダーハンドパスは、次走者がバトンを受け取りやすく、オーバーハンドパスの場合のように腕を高く上げなくて済むため、バトンの受け渡しがうまくいった場合は、時間のロスが少なくて済む。
新アンダーハンドパス
日本チームが採用しているのは、アンダーハンドパスであるが、ただのアンダーハンドパスとは違い、アンダーハンドパスの欠点と言われる「選手間の距離が近すぎる」という問題を修正した「新アンダーハンドパス」と言われる方法。
簡単にいえば、通常のアンダーハンドパスよりも走者間の距離が長く、かつ、オーバーハンドパスの場合にあちがちな「次走者がスピードを落とす」ことのないような腕の角度、タイミング等々、絶妙のバランスが追及された「最適解」なバトンパスになっているという。
なお、このバトン受け渡し技術は、日本陸上界の「企業秘密」で、詳細が明かされることはないようだ。
そして、このバトンパスは立派な「ノウハウ」であり、選手が変わっても「使えるもの」になっているという。
・・・ともう一つの理由
もうひとつ、これは朝原宣治氏が「私見ですが・・・」と一言添えた上で語られた要素がある。
それは、日本人の場合、身体能力上、クラウチングスタートが相対的に苦手(他の強豪国の選手と比べると加速力に劣る)という点があるのではないか、という。
そうだとすると、リレーの場合は、第一走者以外は、はじめから立った状態でスタートするため、身体能力上のハンデが解消されていることになる。
ジャマイカもアメリカも「ただ走る」だけ
現時点では、ジャマイカもアメリカも、それ以外の強豪国も、ただ「力任せに走る」ということしかしておらず、国を挙げてバトン技術のノウハウを確立することも、個々の選手レベルでヒストイックにバトン受け渡しのトレーニングを重ねるということもしていないと見られている。
そういった点が、「走力に劣るハイテク大国」日本が、彼らと十分に闘える理由になっていると考えられる。